インスペクションとは?不動産売買でのメリットやかかる費用を解説
インスペクションとは、中古住宅を売買する際に行う住宅診断のことです。トラブルを防ぎ、安心して取引をするための重要な役割を担っています。今回はインスペクションのメリットや、実際に依頼するときのポイントについて分かりやすく解説します。
インスペクションとは?
– Point 1 –
インスペクションとは、英語で「調査」や「点検」などの意味を持ち、不動産売買においては、一般的に中古住宅の売買契約前に行う、不動産調査のことを指します。この調査では、住宅の劣化や欠陥を調べるほか、修理が必要な時期やかかる費用のアドバイスも行われます。インスペクションを行うのは、民間資格を取得した人や、建築士などのホームインスペクターと呼ばれる専門家です。
今回は、インスペクションのメリットやかかる費用、実際に依頼する会社選びのポイントについてご紹介します。
インスペクションの目的
– Point 2 –
中古住宅をトラブルなく安心して売買するために、インスペクションは重要な役割を担っています。
もし、建物の欠陥に気付かずに中古住宅を売却してしまうと、引渡し後に買主とトラブルになってしまいますが、事前にインスペクションを行っておくことで、専門家の客観的な診断のもと、建物のコンディションを明確にして売り出すことができるためです。なお、インスペクションを依頼するのは、家を売却する売主だけでなく、買主も行えます。
専門家による
調査が一般的
– Point 3 –
/
専門家による調査内容は?
検査は、屋根や外壁、内壁、排水管や給湯管などの状態を目視でチェックするといった方法が一般的です。さらに、修繕が必要な箇所があれば、かかる費用や実施するタイミングまでアドバイスしてくれます。インスペクションは売買契約の前に1度行うのが一般的で、所要時間は一戸建てだと2~5時間程度、マンションだと1.5~2.5時間程度が目安です。
インスペクションの検査項目
検査項目は会社によって異なりますが、主に以下の部分を確認します。
物件の種類 | 構造耐力上主要な部分 | 雨水の侵入を防止する部分 |
一戸建て住宅 | 基礎、壁、梁、柱、小屋組、床、土台など | 屋根、壁、開口部、天井など |
マンション | 基礎、基礎杭、壁、床など | 屋根、壁、開口部、配水管など |
また、家の傾きや建物内部の鉄筋の状態などを見る場合は、機械を使ってより精度の高い調査を行うこともあります。このような調査は、基本料金とは別にオプション料金がかかることが一般的です。詳しい料金の説明は後程解説します。
近年、中古住宅市場におけるインスペクションの重要性はますます高まっています。
スムーズに不動産売買を行うために大切なインスペクションですが、近年、中古住宅市場におけるインスペクションの重要性はますます高まっています。2018年4月には、宅地建物取引業法(宅建業法)の改正により、不動産売買において不動産会社によるインスペクションについての説明や、調査結果の報告などが義務化されました。ただし、インスペクションの実施は義務化されていません。
また、2020年4月には民法が改正され、これまで分かりにくかった中古住宅の売買に関するルールが明確化されました。これにより、欠陥や不具合に気付かずに売買した中古住宅について売主にかかる責任がさらに重くなっています。
インスペクションのメリット
【売主側】
続いて、売主と買主、それぞれのインスペクションを行うメリットを具体的に見ていきましょう。
◆ 早く、高く物件を売れる可能性が高まる |
◆ 引渡し後のトラブルが未然に防げる |
売主にとっての大きなメリットは、売却する不動産をインスペクション済みの物件として売り出すことで、早く、高く売れる可能性が高まることです。「プロの検査済みでトラブルが起こりにくい物件」としてインスペクション未実施の物件と差別化でき、買主が見つかりやすくなります。また、インスペクションによって適切な修繕を行うことで、売却価格アップも期待できるでしょう。
さらに、物件の状態をきちんと説明したうえで売買契約ができるため、買主から売買後に覚えのない修理費を請求されたり、クレームをいわれたりといったトラブルを未然に防ぐことができます。
インスペクションのメリット
【買主側】
◆ 安心して物件を購入できる |
◆ 購入後の費用負担の予測が立てられる |
買主にとって最も大きなメリットは、インスペクション済みの物件を購入できる安心感でしょう。プロによる検査で建物の状態が分かるため、検査をしていない物件と比べると不具合の有無や、不具合内容などが明確に把握できた状態で購入できます。
また、修繕が必要な箇所や、劣化状況が分かるので、購入後の維持費用やリフォーム費用などが予測できることも買主にとってうれしいポイントです。もし売主側でインスペクションを実施していない場合は、買主側でインスペクションの実施を検討するとよいでしょう。
インスペクションの
費用の相場はいくら?
– Point 4 –
相場は一戸建ての場合、5~6万円程度、マンションの場合は4~5万円程度
インスペクションの金額は検査を請け負う業者によって異なりますが、相場は一戸建ての場合、5~6万円程度(より詳しい検査オプションを付ける場合は10万円前後)、マンションの場合は4~5万円程度です。ただし、この価格は基本料金の価格であり、基本料金で行う点検は一般的に、床下や小屋裏(屋根裏にできる空間)を外側や点検口から目視で確認するだけになります。基本料金でどこまで点検してもらえるか、業者に事前確認しておくとよいでしょう。
オプションの料金がかかることがある
ホームインスペクターが建物の中に入って点検する場合や、機械を使った検査、耐震性の審査を行う場合は追加料金がかかり、10万円を超える場合もあります。一見高額に思えますが、築年数が古かったり、状態が不安であったりする物件の場合にはこうした調査をすることで、後々のトラブルを避けることができるため、必要があれば、前向きに検討してみましょう。
補助金の利用でお得になる
上記のように、インスペクションにかかる費用は安くありませんが、実施によって補助金を受けられる可能性があります。
補助金の制度には、国が行っている「長期優良住宅化リフォーム推進事業」や、「住宅ストック循環支援事業」などに加えて各自治体が独自で行っているものもあります。たとえば、長野県の「あんしん空き家流通促進事業」は、中古住宅におけるインスペクション費用の2分の1以内(1戸当たりの上限は5万円)が補助される制度です。
これらの補助金を利用するには、要件を満たす必要がありますが、要件に合えば節約につながります。お住まいの自治体で補助金の制度があるか、チェックしてみてくださいね。
インスペクションの依頼はどこにするのがよい?
インスペクションを行う会社には、不動産会社やリフォーム会社のほか、インスペクションの専門業者もあります。ここで大切なのが「どんな会社にインスペクションを依頼するか?」です。単純に価格の安さだけで決めてしまうと、十分な検査をしてくれなかったり、そこまで必要ではないリフォームを勧められたりと、結果的に損をすることがあるかもしれません。ホームインスペクションの会社を選ぶときは、以下のポイントを重視しましょう。
会社の実績や経験が、検査する建物の特徴と合っている
依頼する会社の実績や、過去に携わってきた建物の種類はチェックすべきポイントです。インスペクションといっても、建物の種類や工法によって、見るべき点は違います。検査してもらう物件に近い建物を扱った経験があれば、より適切な診断ができるでしょう。
なお、建築士の資格保有者のホームインスペクターがいるからという理由だけで会社を決めるのは要注意です。大規模施設と一戸建て住宅では、建築や診断に必要な知識や技術がそれぞれ異なります。そのため、大規模な建築物を設計できる1級建築士の資格を持っていれば適切な診断が可能、とは限りません。資格よりも経験や実績、またどのような建物の検査に定評があるかを重視して適切な診断ができる会社を選びましょう。
対応や説明がしっかりしている
検査内容やその結果を説明する際、一般の人にも分かるように話しているかという点も重視しましょう。インスペクションは、建物の状態を売主や買主がきちんと把握するためのものです。優れた知識や検査の技術があっても、その内容を分かりやすく説明できなければ、インスペクションを行う意味が薄れてしまいます。
インスペクターの担当者とは、検査後もやり取りをする機会があります。対応やコミュニケーションに違和感があると、その後の売買取引に影響することもあるため、対応に信頼を持てる会社を選ぶようにしましょう。
インスペクションと
瑕疵保険の検査の違い
瑕疵保険◆ 検査は保険の対象部位のみ |
インスペクション◆ 検査は網羅的 |
ここまでインスペクションについてご紹介してきましたが、「瑕疵(かし)保険の検査と同じじゃないの?」と思った方もいるでしょう。瑕疵保険の検査とインスペクションは混同しやすいのですが、その目的や内容は異なります。
瑕疵とは、傷や故障など、売買する物件に見られる不具合を指します。購入後にこのような瑕疵が見つかって困ることのないよう、買主の安心のために売主が加入する、あるいは買主自らが加入するのが瑕疵保険です。屋根や外壁など、定められた範囲内の瑕疵の検査と補償をするもので「既存住宅売買瑕疵保険」とも呼ばれます。
瑕疵保険に加入していれば、万が一物件の購入後に瑕疵が見つかっても損害を補償してもらえるため、売主にも買主にもメリットがあります。ただし、瑕疵保険は全ての中古住宅で利用できるわけではなく、瑕疵保険が適用されるのは、定められた基準に合格した物件のみです。
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